About Us

そこに行けば心を豊かにしてくれる空間、

お茶を飲んでいるとつい時間を忘れそうになって、

一人を楽しみたい人もおしゃべりを楽しみたい人も、みんなを楽しみたい人も、

それぞれがそれぞれに過ごすことのできるちょっとした隠れ家が、グラニーズです。

本と手作りと日々の暮らしを愛する女性のために!

2018年2月16日金曜日

お雛様

今年は本当に雪が多いですね。しかもいつまでも寒いです。
日曜日は春めいてほっとする気候でしたが、月曜日は大雪。
火曜日、グラニーズのキッチンスタッフは仙台の中でも雪の多い山沿いですので、自宅待機していただきました。私は店にいましたが、お客様はなく(車でも歩きでも足元の悪さは半端ではありませんので)、ちょうど良い機会でしたのでギャラリーの展示交換をしました。

お雛様を飾りました。



                                 
段飾り。これは昔、両親が私に買ってくれたものです。



私が3歳のときでしたが、父は勤めていた病院を辞めて医院を開いたばかりでした。ところが数か月もしないうちに隣の家から夜中に出火(ひよこを温めていた電気が原因とのことでした)、強風のためその町内一帯を焼きつくす大火になりました。父は恐怖でまとわりつく2歳年長の兄をなだめながら医師免許証と大切にしていた顕微鏡を持ちだすのがやっと、自転車の後ろの荷台に2歳の弟をくくりつけ、私は母に手を引かれながら振り返った夜空に高く燃えあがる凄まじい炎と飛んでくる火の粉が今も記憶にあります。戦争はもうとっくに終わっていたわけですが、私は今も、空襲の記録を読むとあのときの私たちが遭遇して全てを失った火事のことを思うのです。

で、何もかも失った両親が、私のためにわざわざ東京の三越に注文して買ってくれたお雛様です。小学校の2年生だったと思うのですが学校から帰ったら座敷に大きな荷物が積んであって、すごくうれしくて、早く3月が来て欲しくて、大興奮でした。私はお人形が大好きでした。
段を組み立てお人形を飾り、雪洞を灯すとまるで夢の世界で、私は飽かずにその前に座って眺めていたものです。でもその後このお雛様はずっと実家においてあり、このグラニーズを始めるまで、母が時たまお内裏様を出すことはあっても段を組み立て全部のお人形を飾ることは何十年もありませんでした。そういう意味では一緒に見て下さる人がいるこのカフェギャラリーを始めて良かったなあとしみじみ思います。

                  
そして娘が生まれたときに買った木目込みの内裏様。これもいまだに実家である我が家にあって私が飾っています。
                             

                 


                              
これは友人から頂いた紙の手作りの内裏びな。美しい紙を選んで手ずから折ったお雛様。台座はかまぼこ板に色付けし、赤い布を敷いた小さなみやびなお雛様をみると、続いてきた行事に心が和みます。







2018年2月5日月曜日

クロスステッチ

いつも毎月最初の月曜日午前は、さまざまな手芸技術を広く浅く経験することを目的にしたワークショップを行っています。さて今日はクロスステッチをやってみました。以前、1色か2色だけの糸でひたすらにコマをバッテンのステッチで埋めるという、クロスステッチの基本中の基本を一度やりました。そのときの注意はバッテンがいつも同じ方向でクロスすること、裏で糸は布目に直角か平行に、決して斜めに渡らないようにという単純なものだったのですが、今回は沢山の色を使って、糸を変えながら多色のモチーフを作っていくというちょっと手の込んだ刺し方に挑戦。楽に刺せるように目の大きなクロスステッチ用キャンバスに25番刺繍糸6本どりで刺します。

私は2つのモチーフを刺して準備。一つのモチーフが大体2時間で出来る見当だったのですが、みなさん意外と苦戦でした。刺すよりほどいている時間の方が長かったようですが、”はまりそう!””楽しい!”とは言って下さいました。

                             

私の見本はお人形のクッション(ピンクッションでも可)になりました。

                             

自分の経験では刺繍をやってみたいと思う人はまずクロスステッチから始めることが多いように思います。クロスでマスを埋めていくという単純さが、これなら出来そうと思うのです。そして最初は小さなキットを買って挑戦。次は少し大きな図案に。ところがはまり始めると意外に奥が深く頭を使わなければならないことがわかって来ます。裏で斜めに糸が渡らないように刺し進めるには?色を変えるとき目数を数え間違えないためには?etc.

何だかんだとグラニーズの店内にも長年の間に私の刺したクロスステッチがいくつかあります。店で使っているプレートです。
                              
                                   



                            

壁にもフレームがいくつか飾ってあります。昔イギリスで買った文学者の家シリーズのキットですが、カウントが細かくて苦労しました。ベアトリクス・ポッターさんのコテージ。でもまだ今より目が良かったのですね。次のトーマス・ハーディのコテージなど、クロスではなくハーフの超細かいもので、同じシリーズのシェークスピアの家も刺しましたが途中で窓の桟がズレているのに気付いた時はあまりのショックでいったん挫折しました。数年後に気を取り直し、一番刃先の尖った刺繍ばさみを買って毛抜きを用意して、解くのが大変でした。






それからこんな詩を刺したフレーム。1990年代だったと思いますがアメリカがどこかの国に侵攻したときに、気持ちのやり場がなくて刺したもの。第一次大戦のときの詩です。でも今は戦争は遠い戦線での出来事ではなく、いったんことあればこの住んでいる場所が一変するかもしれないと思ってしまいます。


春、小鳥がやさしくさえずっているこの夕暮れ
光は柔らかに傾きつつある。
信じられる? 男たちがたった今殺しあっていると?
今、この夕べに。空は薄くれないに日暮れて小鳥がさえずっている今このときに?
誰も信じないから、男たちはこの夕べ、殺し合い、死につつある。
夏も秋も冬もそうだったし、この春も。

                             






2018年2月1日木曜日

ブックカバー

今年は雪がいっぱい降りました。東京だけではありません。積もった雪は凍って足元は危なくて、そんな日々ですからお客様の出足はなかなかです。お天気には勝てません。3000年ぶり噴火の元白根山、予測できなかったのは、自然の動きが人間の知恵を超えているということですよね。世界中の火山の7割が集中している日本で、ここだったら数万年は動きがないから原発の核廃棄物を埋めても大丈夫と学者が言っています、などということを信用できるわけがないのでは?

                             


ブックカバーの注文がありました。最近作るのは四角形のものばかり。中表に縫い、ひっくり返せば出来る単純なものを作るのが楽しいです。ペッたんこバッグとか、コースターとか、おやつマット、ランチョンマット等など。そしてブックカバー。自分が本好きなので注文されるのはうれしいです。でも何故か続けて美智子皇后さまの本のカバーを頼まれました。とても緊張しました。

まず、まどみちおさんの詩を英訳されたご本。絵本です。
布はリネンで織が荒いのですが優しい色合いがとても好きなお気に入りの布でしたので柄をそのまま生かし、糸もワイルドフラワーズコレクションと言うとっておきのぴったりの色で刺繍を加えました。

                            



次の本は、最初は『橋をかける』という題で出版されましたが、今は『バーゼルから』となったのですね。ご自分の子供時代の本との関わりを語られた珠玉のお言葉。昔テレビで直接の語りかけに接する機会がありましたが、今の日本でこのように深い言葉を語られる皇后さまがいらっしゃる幸運に感動を覚えたものです。
                              
                              

                                 








色合いやデザインは良かったのですが、仕立てが今ひとつ。素人芸を出なくて我ながら残念です。